遊休農地の「負動産」  税から考えてみました

先月、遊休農地の事について書きました。
昨年11月、我が家に「利用意向調査書」「農地における利用の意向について」という書類が送られてきてから色々と考えます。

国としては耕作放棄地を減らし農業を出来るだけ効率よく続けてほしいために法人参入を認め、自分で農業が出来ない人に向けての政策として農地中間管理事業(いわゆる農地バンク)を設けています。
岡山県の農地バンクの利用状況を見てみましたが、H29年4月までの累計で農地を貸したい貸手2,343件に対して農地を借りたい受手696件。契約成約面積は9,879千㎡(約9,879反)となっています。
農家の高齢化や農業を継いでくれる人が少ないという話は以前からいろいろ言われていますが、貸手の件数が少ないなぁと思いました。
要因としては、借手が決まるまでは自分で農地を維持しないといけない、貸出期間が10年以上である、賃料が固定ではない(受手の意向を考慮する)などいろいろと問題があるようですが、それ以上に「所有者の土地に対する思い・愛着」と「農地の立地」が大きいのではないでしょうか。

私の父は昔から「土地は先祖から預かっているものだ」と言っていました。その場所で生まれ育ち、小さい頃から半ば強制的に手伝わされたりしていたそうですが、親や祖父母の苦労を見たり土地を守ることを教え込まれたせいもあるのでしょう、自分の代で手放すことは全く考えていません。人に貸すという事にも不安を感じるようです。
仮に貸すとしても、借りる方としては平地で形が整っているなど農作業のしやすい農地の方がいいはずです。(農地バンクを利用するか否かによらず)
そのような事を考えると、棚田100選などに選ばれるような特別な農地は別ですが、傾斜地にある畑などはいずれ遊休農地になるのではないかと思います。
そのような土地はいっぱいあるはずです。

今回はなんとか遊休農地と判定されないよう対処したわけですが、農地を所有している限り扱いをどうするかについて悩まされます。

そんな時、2017年6月7日付朝日新聞の「負動産」のゆくえという記事を読みました。
手放したくても買い手がつかず税の負担は続くという負の資産となっている不動産について3人の意見が紹介されています。
その中で札幌学院大学教授 田處博之さんは所有権という権利から意見を述べられていました。

所有者がいない土地は国に帰属すると民法は定めているが、土地を手放したい
人の一方的な申請による土地登記は出来ない(国が受取ってくれないと所有者で
なくなる登記は出来ない)。不動産も一定額を払えば所有権を放棄できるといった
ルールを作るべきではないか。

私も同じようなことを考えました。
土地を寄付したくても自治体が受付けてくれないのは、公共利用に必要ない土地であることと固定資産税が徴収できなくなるからです。
それならば一定年数分の固定資産税を払うから国が土地を引取ってくれないだろうか、と考えます。
一定年数はどのくらいかと考えると、例えば一世代と考えて30年くらいです。
所有者の金銭的な負担を考えるのであれば、所得税の寄付金控除を1年だけでなく10年間くらい出来たらいいのではないかと考えます。
固定資産税の30年分はそれなりの金額になりますが、農地は元々固定資産税が抑えられていますし、維持管理の負担を考えると妥協できるように思います。
国への寄付となれば所得税の寄付金控除の適用はあっても住民税の方は寄付金控除の対象とはならないので自治体は税収に影響ありません。それに、10年間の控除となると現在でも住宅ローン控除がありますし、所得税として考えても所得控除である寄付金控除は税額控除である住宅ローン控除ほど納付税額が抑えられるとは思えません。(感覚ですが)
さらに、国から農地を買いやすくする、ということにすればもっといいように思います。
自分が土地を手放したとしても子や孫の世代が再び農業をしたくなった時に、先祖が所有していた土地が他人のものになっていなければ買いたいと思うかもしれません。

まあ、こんなことを考えても実現の可能性はないのでしょうが、多少でも同じようなことを考えている人がいると分かっただけでもうれしいものです。