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 白色申告の7割超が「記帳不備」だそうです

昨年(2020年10月)、政府税制調査会で「個人事業者の適性申告の確保や、記帳水準の向上について議論開始」がありました。
個人事業者に対しては次のような事を問題としているようです。
・青色申告率が6割程度にとどまっている
・今でも手書きで帳簿を作成している事業者がいる
・帳簿付けを正規の簿記(複式簿記)でさせたい
これらを問題ととらえるのは、適正な申告者を増やすこと、税務調査を効率化することを目的とするからです。
そのためには「正確な記帳」が有効になります。

正確な記帳をするには会計ソフトを使用するのが効率的ですが、もちろん手書きでもできます。
先述の調査会の資料によると、2020年の調査では手書きで記帳している割合は24%だそうです。
「会計ソフトを利用するほど売上や経費が多くない」「会計ソフトに費用を掛けたくない」「使い方がよく分からない」などいろいろと理由はあるでしょうが、手書きの場合に生じる「記帳漏れが生じたときに気づきにくくなる」という問題は会計ソフトを使用すると起こりにくくなります。

手書きで記帳する個人事業者の申告の大多数が白色申告か簡易簿記による青色申告(特別控除額が10万円)だと思われます。

これらの人は調査会の資料によると、税務調査において「記帳不備」と指摘される割合が高く、白色申告者では7割を超えています。

ここで言う「記帳不備」とは、実地調査において
(A)記帳すべき事項が相当欠落しているまたは記帳が相当期間(おおむね3か月程度以上)遅滞している場合
(B)記帳が全くされていない場合
(C)帳簿等の提示がなく記帳状況が不明な場合
と確認された事例を指すということです。

7割というのはとても高い割合で驚きます。
記帳不備は申告漏れの原因となるため事業者は自覚する必要があります。

調査会の資料には、記帳水準・適性申告の程度が低いと判断された場合において税務署は納税者をどのように認識しているか示されていました。
上記の(A)及び(B)は左側、(C)は右側に分類されるものと思われます。

記帳自体は手書きであっても会計ソフトを使用してもどちらでも構いませんが、精度が求められています。
個人用と事業用の現金や通帳を分ける、現金出納帳をつける、ためずに小まめに記帳する、その領収書は事業に必要なものだったか、など基本的なことがやはり重要という事だと思います。

 (個人事業)事業所得が赤字だった場合

あとひと月で2020年も終わります。
今年は新型コロナウィルスの影響を受け、事業が赤字になる事業者もいるのではないでしょうか。
事業所得が赤字の場合の所得税確定申告は、申告の仕方で異なります。
※事業所得だけの申告を前提とします。
1.青色申告者
昨年所得税を納めた    → a)赤字を来年に繰越す  b)前年に繰戻し還付請求
昨年所得税を納めていない → 赤字を来年に繰越す
2.白色申告者
赤字の原因が災害による   → 災害に該当するものは来年に繰越す
赤字の原因が災害によらない → 特になし

【青色申告】
a)赤字を来年に繰越す
青色申告者は、今年の赤字(損失)を翌年以降、最長3年間繰越すことが出来ます。
その場合は通常の申告書用紙(第1表、第2表)に加えて第4表を提出します。
第4表は、・損失がどの所得から生じたものなのか、・損失がいつ発生したものなのか、・来年以降も繰越す損失があるのか、
などを示すものです。


b)前年に繰戻し還付請求

青色申告者は、前年も青色申告をしておりかつ納税をしている場合、今年の損失の全部または一部を前年に繰戻して
前年の所得税の還付を受けることが出来ます。
その場合は通常の申告書用紙(第1表、第2表)に加えて所定の請求書の提出が必要です。

純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書

また、前年の所得より今年の損失の方が大きく戻しきれない場合は、戻しきれない損失を来年以降3年間繰越すことが出来ます。

a)を選択することが多いですが、前年の所得、今年の損失額、来年以降の見込みなど総合的に判断して選択します。

【白色申告】
白色申告者は、赤字のうち災害を原因とする費用や損失については翌年以降、最長3年間繰越すことが出来ます。
通常の申告書用紙(第1表、第2表)に加えて第4表を提出します。
災害以外の赤字は切り捨てです。

事業所得の損失について、青色申告と白色申告の一番の違いは損失の発生原因です。
白色申告は災害によるものしか繰越が出来ません。

災害とは一般的には地震などの自然災害、火事などの人為的災害を指すのでしょうが、この度の新型コロナウィルスについては特殊災害に該当するようです。
新型コロナウィルスに関連するものはすべて災害にあたるかというとそのような事はなく、国税庁からは該当例が公表されています。
[商品・固定資産など資産そのものに生じた損失の例]
・飲食業者等の食材(棚卸資産)の廃棄損
・感染者が確認されたことにより廃棄処分した器具備品等の除却損
・イベント等の中止により、廃棄せざるを得なくなった商品等の廃棄損
[被害の拡大・発生を防止するために緊急に必要となった費用の例]
・施設や備品などを消毒するために支出した費用
・感染発生の防止のため、配備するマスク、消毒液、空気清浄機等の購入費用

「資産そのものに生じた」「拡大・発生防止の緊急性」という点がポイントになるようです。
そのため上記の該当例をみると職種は限られるものと思います。
廃棄損については計算根拠となる資料(商品名、数量、取得単価)は必要になるものと考えます。
(青色、白色どちらであっても)

「損失の3年間繰越」は青色申告制度の特典の一つです。
白色申告の方は青色申告にしてみてはいかがでしょうか。

 「税金を払いたくないから固定資産を買う」って大丈夫?

「税金を払いたくない」という声はよく聞きます。
確かに、気持ちは良く分かります。
「税金を払いたくないから機械や道具を買う」という人もいます。
それが本当に必要なものならいいのですが、税金のためという事であれば、手元資金が減るだけかもしれません。よく考えてください。
とお伝えしています。
支払ったものがすべてその年の経費になるのであればいいのですが、固定資産のように減価償却という方法で数年に渡り経費化される場合は、手元のキャッシュについてどれだけ使えるかを考える必要がでてきます。

簡単な例です。
売上 1,000 経費 700 利益 1,000-700=300 とします。

税率が10%だと税は 300×10%=30 となり、手元に残るお金は 300-30=270 です。
仮に5年間変わらないとすれば、手元に残るお金は累計で 1,350 になります。

備品200(償却年数は4年)を購入したとします。
経費は減価償却費50が増えるため 750 となり、利益は 250 となります。
税は 250×10%=25 です。
減価償却費は支出を伴わない経費なので、税を支払う前に手元に残るお金は 300 です。

備品購入1年目に手元に残るお金は 300-200(備品代金)-25=75 となります。
2年目から4年目までは 300-25=275
5年目は減価償却が終了しているので利益は300となり、手元に残るお金は 300-30=270 です。
備品を購入した場合、1年目から5年目までの手元に残るお金の累計は 1,170 となります。

5年間の累計では、備品(固定資産)を購入した場合としない場合の税金と手元に残るお金は下の表のようになります。

税金の方に着目すると、固定資産の取得価額×税率分(200×10%=20)が節税になり
手元資金に着目すると、購入分のうち取得価額×税率分は取り戻せる
(1,350-1,170=200-200×10%)
ことになります。

手元資金と支払う税金、両方に目を向けて方針を決めたいものです。

 年の途中から専従者給与を受けたい

青色申告の個人事業者の場合、同一生計の家族(配偶者や親族)に給与を支払った場合、要件を満たしていれば必要経費と認められます。
その要件とは次のとおりです。
・青色事業専従者に支払うこと
・「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出していること
・届出書に記載された金額以内の給与を支払っていること
・給与額が労務に対して相当と認められること

「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出時期

通常、「青色事業専従者給与に関する届出書」は3月15日までに税務署に提出します。
そうすればその年の1月からの給与が必要経費となります。
これは、すでに開業していて専従者がいる人のケースです。
では年の途中で開業したり、専従者がいることとなった場合はどうでしょうか。
1月16日以後にそのようなことになったのなら、その開業した日や専従者がいることとなった日から2カ月以内に届出書を提出すれば同一生計の家族に支払う給与は必要経費と認められます。

3月16日以後に提出したAさんのケース
Aさんの妻は専業主婦でした。
前年のAさんの所得が多かったため、Aさんは、妻がAさんの記帳や経理をするということで5月から給与を支払う、という内容の「青色事業専従者給与に関する届出書」を5月中に税務署に提出しました。
これについては、専従者がいることとなった日から2カ月以内の提出であること、妻が6カ月以上夫の事業に専従する(青色事業専従者である)ということで認められました。
Aさんはすでに開業していて利益も出ていたため3月15日までに届出をしておけば良かったのですが、間に合わなかったとしても上記のように要件を充たせば適用される場合はあります。
Aさんの場合は、提出するのが遅かったため12か月分の給与という訳にはいきませんでしたが、7か月分の給与を必要経費とすることで所得を減らすことが出来ました。

青色事業専従者給与については届出書の提出期限も大事ですが、給与を支払う相手がそもそも青色事業専従者であるという点は確認しておかなければいけません。

青色事業専従者である、の意味

青色事業専従者とは次の要件をすべて充たしている者をいいます。
(イ) 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族
(ロ) その年12月31日(死亡した場合は死亡時)に年齢が15歳以上
(ハ) その年を通じて6月超(一定の場合には事業に従事できる期間の1/2超)の期間その青色申告者の事業にもっぱら従事している

この中では(ハ)がポイントでしょうか。
6カ月以上事業にもっぱら従事出来ればいいのですがそうはいかない場合もあります。
青色申告者と事業専従者のどちら側にも想定されます。
青色申告者側の事情・・・
年の途中に開業、廃業、休業または死亡した
季節営業などその事業が年間を通して営業されていない
事業専従者側の事情・・・
婚姻、長期間の病気、死亡などにより年間を通して事業に専従できなかった

これらの場合は専従者が従事していた期間が従事できる期間の1/2を超えていたかどうかが青色事業専従者の判定の基準になります。

年の中途から青色事業専従者給与適用を受ける場合には、給与額と給与を受ける期間を考える事が必要です。
なぜなら青色事業専従者給与を適用すると配偶者控除や扶養控除は受けられなくなるからです。
住民税を納めない範囲で給与額(月額8万円程度)決める人が多いです。
その場合、事業専従者に5カ月以上給与を支払わないと不利になります。
事業専従者給与額40万円(=8万円×5カ月) > 配偶者控除額38万円

(補足)
給与は毎月実際に支払いましょう。出来れば記録が残るよう預金口座に。

 消費税増税は契約書を交わすチャンスかも

1.印紙の消印について
最近、契約書の印紙の消印について聞かれました。
「契約者全員が印を押さなくてよいのですか?」と。
結論から言うと、全員が押しても1人だけが押してもどちらでも構いません。
消印は、その契約書に押した印でなくても構わなく、本人でなく代理人や従業員が消印しても構いません。
しかし、ボールペンで2本斜線を引いたようなものは認められません。
これは印紙の再使用をさせないためであり、誰が消印をしたかが判ればいいからです。
(印紙税法第8条第2項、印紙税法施行令第5条、印紙税法基本通達第64条)
印紙の消印よりも大切なのは契約書の中身です。

2.契約書
長年取引しているのに今さら契約書を交わしたいとは言いにくい
と思っていませんか?
消費税の増税時は、話を切り出すチャンスではないかと思っています。
増税分の2%を上乗せするのかしないのか、消費税を外税にするのか内税にするのか、決めたら
取引先と交渉(または報告)するはずなので、その時が契約書の話をするきっかけになるのではないでしょうか。
契約書は、将来の紛争やトラブルに備えてお互いの権利や義務がどうなっているかを明らかにするために作成するものです。
内容は、
① いつ     契約日・引渡し時期など
② どこで    引渡し場所・サービス提供場所など
③ だれが    契約の当事者
④ だれと    契約の当事者
⑤ なにを    商品・サービスの内容
⑥ なぜ     契約締結の目的
⑦ どのように  引渡しの方法・代金の支払い方法など
⑧ いくらで   代金・数量など

といったところでしょうか。
その他としては、リスクについての規定(問題等が起きたときだれがどこまで責任を負うのか)があればいいと思います。
自分で契約書を作るのが大変であれば、文具店にある日本法令の各種契約書が参考になります。

「税理士さんに言われたんで・・・」って話を切り出すのも構わないと思います。
個人事業主であってもリスク管理は必要です。
消費税の増税は経理や自分の財布の負担ではありますが、価格の見直しや契約書の作成などができるチャンス
と考えるのはどうでしょうか。

 帳簿の摘要に書く内容 -複数税率になったら税率も表示する-

私は経理や簿記の経験のない方のお手伝いをしています。
「代わりにやってほしい(記帳代行)」であったり、「やり方を教えて欲しい(記帳指導)」であったりです。
記帳指導の場合、特に全くの初心者の方から最初に言われることが、「何を書いたらよいか分からない」という事でした。
そのような場合、家計簿をつけたことがない、という方が多い傾向でした。

まず用意するのは現金出納帳です。↓は100円ショップに売られていたものです。

日付と金額以外には「摘要」しかありませんが、他に「科目」という欄がある現金出納帳もあります。
今回は「摘要」欄しかない現金出納帳の場合を説明します。

「摘要」に記載する内容は消費税の課税事業者かどうかで少し変わります。

消費税の課税事業者ではない場合
2年前の売上が1,000万円以下の事業主が該当します。
① もらった、使ったお金の内容の分類(このことを会計用語で「科目」と言います)
② 取引をした相手の名称
③ 取引の内容(商品名や〇月分など具体的なこと)

科目には、売上、仕入、通信費、交際費、消耗品費、等々一般的に決まっているものがありますが、自分でわかりやすいように作っても構いません。
申告時には経費を科目ごとに集計するので、記載しておくと便利です。
書ききれなくて複数行になっても問題ありません。
慣れないうちは①と②から始めて、徐々に③を記載するようにしましょう。

消費税の課税事業者の場合(2019年10月1日以降)
上の①から③に加え
④ 軽減税率対象の取引である場合は8%と記載
することが必要です。
このことは、本則課税、簡易課税のどちらを選択していても共通のルールです。

8%と記載するのが面倒なら記号(※や★など)でも構いませんが、個人的には8%と記載しておく方がわかりやすいのではないかと思っています。
スーパー、ドラッグストア、コンビニなど食料品と日用品を一緒に販売している店舗の領収書の場合、消耗品費などの科目でまとめて記載していたかもしれませんが、10月1日以降は消費税率ごとに食料品とそれ以外に分けて記載しなければなりません。
今まで以上に領収書のチェックが必要になりますね。

初心者の方には、「記帳をしてみよう!」と思ったのであれば、まずは始めて欲しいです。
面倒なことかもしれませんが、領収書をためずに少しづつ記帳すれば自然と慣れてくるはずです。

 事業主借と事業主貸 迷ったときのやり方

個人事業主の方が帳簿をつけるとき「よく分からない」といわれるものの一つが
事業主借 と 事業主貸 という勘定科目の使い方です。

この勘定科目については、私も税理士事務所で勤務したときに初めて見ました。
簿記の勉強をしているときには見たことも聞いたこともありませんでした。
簿記の本や学習では会社での経理処理を想定しているのでまず出てきません。
同じような名前で、何で2つあるの?って感覚でした。

この勘定科目を使うとき、多くの場合現金や預金が関係します。
・仕事用のお金が足りなくなったから貯金を下ろした
・仕事用のお金で洋服を買ったり、旅行に行くなど仕事以外のために使った
などです。

銀行等からお金を借りるときの経理処理が参考になります。

この時の仕訳は (借方)現金または預金 100 (貸方)借入金 100  です。

自分の貯金や、家のお金を仕事用にまわしたときは

仕訳では (借方)現金 100 (貸方)事業主借 100   となります。

借入金 が 事業主借 に変わっただけです。
つまり、仕事用にお金を借りたから 「事業主借」という科目を使うのです。
現金出納帳には  科目名欄に「事業主借」  収入金額欄に100円 と記載します。

逆に、仕事用のお金を自分の生活費に使ったときは

仕訳では (借方)事業主貸 100 (貸方)現金 100   です。

つまり、生活費としてお金を貸したから「事業主貸」という科目を使うのです。
現金出納帳には  科目名欄に「事業主貸」  支出金額欄に 100円 と記載します。

慣れないうちは「こんがらがる!」とよく言われます。
そのような場合私は、どちらか1つだけ使うことをお勧めしています。
「事業主借」であっても「事業主貸」であっても、どちらでも構いません。
事業主借、事業主貸のどちらか1つしか使わない場合、残高がマイナスになることがよくありますが、全く気にしません。
損益には全く関係ありませんから。

マイナスの残高が気になるようだったら、そのマイナス相当と同額をもう一つの事業主勘定で計上すれば解消します。
仮に、事業主借という科目を使っていてその残高が -3,000 だったら
(借方) 事業主貸 3,000 (貸方) 事業主借 3,000
とすればいいです。

 個人事業主が引っ越し費用を経費とするかどうかの判断

以前、個人事業主の方から「引越ししたんだけど経費になる?」と聞かれました。
もう少し詳しく尋ねてみると、
 ・自宅(賃貸)と仕事場を兼ねている
 ・青色申告である
 ・記帳はしていないが利益は出ていると思う
という事でした。

「今回の契約時の礼金や仲介手数料、前の契約のときに払った敷金から引かれる修繕費、運送業者へ支払った引っ越し代金、これらのうち一部は経費になります。
経費になるのは自宅のうち仕事場(事業所)として利用している部分です。」
と回答しました。

具体的な支払明細などが分からないときには‘一般的な場合ですが’としてお答えするしかありません。

ご相談者は「全額経費にならないかなぁ」という気持ちのようでした。

所得税において必要経費と認められるのは‘事業の遂行上必要な費用’と決められているため仕事用と生活用をきちんと区別する必要があります。

自宅兼事業所の場合、区別しにくい支出はいろいろあります。
例としては、家賃・駐車場代・水道光熱費・固定資産税・自動車税・応接セットなど。
その場合は基準を設けておくことが必要です。
仕事用として使っている場所の面積であったり、使用頻度(ひと月に何日くらい使っているか)であったり、支出の内容に応じて基準はいろいろですが、経費とした根拠をはっきりさせておくことが大事です。

ご相談者の方の場合、結局、引っ越し費用は経費にせず申告をしたとの事でした。
理由を聞いてみると、面倒だったから、でした。
新居の片付け、引っ越しに伴う役所や金融機関の手続、自分の仕事・・・いろいろとやることが多いから少しくらいいいや、ということだったようです。
利益がたくさん出ていれば経費になるものはないかといろいろ探しますが、それ程でもないときは面倒なことはやめようと思う気持ち、わかります。

 売上・収入の計上は「いつ」と「いくら」が重要

個人事業でも法人であっても必ず確認する項目の一つが「売上・収入」です。
基本的な事ではありますがとても重要です。
売上・収入は一定のルールに従って計上します。
ポイントは2点。「いつ」経てるかと「いくら」経てるかです。

「計上する」とか「経てる」は、経理ではよく使われる言葉です。
私はすっかり慣れてしまいましたが、簿記を勉強し始めたころは‘なんか独特’と思っていたような気がします。
別の言い方をするなら「帳簿に記録する」という事です。

事業所得

「いつ」経てるか

その事業が、物やサービスを売る事業なら、商品やサービスをお客様に提供した日(提供が完了した日)が売上・収入を計上する日となります。
長期の建設工事や試用販売、委託販売など特殊なケースは省略します。

実務的には、白色申告の人は現金をもらったときや預金に入金になったときに売上を計上しているはずです。(このことを現金主義といいます。)
青色申告の人はお金をもらっていなくても、商品やサービスを提供したときに売上を計上します。(このことを発生主義といいます。)
青色申告の人がどうしても現金主義で経理をしたい場合は、2年前の所得(不動産所得を含む)が300万円以下という条件があり、所定の届出が必要です。

白色申告から青色申告に変更した年は通常売上が12か月分以上になります。
白色と青色では売上を計上するタイミングが違うからです。

売上が増える→所得が増える→税金などが増える(場合もある)・・・ですが、これは仕方ありません。
青色にするメリットもあるので1年だけはガマンです。

「いくら」経てるか

お客様への請求額=売上金額です。

請求額と入金額が同額でないケースとして次のような場合があります。
・振込手数料が差引かれて入金になる場合
・支払明細書に差引かれる金額が書いてある場合
このような場合でも、お客様への請求額が売上金額になります。

請求額と入金額の差額は経費になるのだから実際の入金額を売上とした方が簡単
という話は聞きますし、そのように申告していたケースを見たことはあります。
確かにそうだと思いますが、正確ではありません。
差引かれるものが経費にならないものかもしれません。
また、年間入金額が1,000万円に少し満たない程度だった場合、請求額で計算すると1,000万円を超えるかもしれません。超えれば消費税の課税事業者になります。

売上を正しく計上するという事は、基本的な事ですがとても重要な事です。
だから必ずチェックするのです。

 補聴器を医療費と認めてもらうには

所得税の確定申告でよく利用される「医療費控除」ですが、対象となる医療費の範囲は広いです。
わかりやすいものとしては、病院・医院や薬局の窓口で支払う診療・治療費や薬代ではないでしょうか。
他には、通院にかかったタクシー代も医療費として認められます。
(ただし自家用車で通院した場合のガソリン代や駐車料金はダメです。客観性がないからでしょう。)
タクシー代が医療費となる根拠は、所得税法基本通達73条の3にあります。

ー所得税法基本通達73条の3ー
次に掲げるもののように、医師等による診療等を受けるため直接必要な費用は、医療費に含まれるものとする。
(1) 医師等による診療等を受けるための通院費若しくは医師等の送迎費、入院若しくは入所の対価として支払う部屋代、食事代等の費用又は医療用器具等の購入、賃借若しくは使用のための費用で、通常必要なもの
(2) 自己の日常最低限の用をたすために供される、義手、義足、松葉杖、補聴器、義歯などの購入費用
(3) 省略

「医師等による診療等を受けるため直接必要」ここがポイントになります。
診療等を受けるために直接必要かどうかは診療等を行う医師の判断が必要になるはずです。そしてその事を客観的に示すために証明書が必要になります。
補聴器の場合、耳鼻科の先生が作成する「補聴器適合に関する診断情報提供書」に診療等に直接必要である旨が書かれているかどうかによります。

申告時に「補聴器適合に関する診断情報提供書」を提示するか添付します。

自分で購入した眼鏡や補聴器を医療費とし、購入費用が医療費控除の対象になるかどうか争われたことがありますが、いずれも認められていません。
客観性が重要という事です。