三世代同居が広がるでしょうか   その2

先日、三世代同居改修工事の税制改正について紹介しました。
子育てにやさしい社会を作るという方針の一環みたいです。
この制度、どの位利用されることとなるでしょうか。

まず、マンションには使いにくいでしょう。
対象となるリフォームの4か所のうち、玄関増設というのは敷地面積との関係になりますが、都道府県庁所在地などの都市部での宅地面積ではどうなのでしょうか。難しそうに感じます。
H20年の住宅・土地統計調査やH26年度住宅経済関連データでみると、住宅のうち持家比率は約60%、その内戸建て住宅は約55%です。
リフォームの状況はというと、リフォームの内訳としては内装等の模様替えが80%超で増改築は15%程度です。模様替えが多いのは賃貸物件も含んでいるからでしょう。

今回の制度、借入金であっても自己資金であっても対象となるリフォーム部分に対する控除額は最高で25万円です。従来からあるバリアフリー改修や省エネ改修に対する控除額と同じです。

子育て支援・少子化対策を目的に設けられたようですが、本当に同居を促したいのであれば、リフォーム部分は1か所でもよいとか控除額を増やすなどしてもよいのではないかと思いました。

次に親世代の方からこの制度について考えてみます。
持家比率約60%のうち65歳以上の高齢者のいる持家は82%超で、そのうち夫婦ともに高齢者の持家は87%です。
「子と同居(二世帯住宅を含む)したい」と思う割合は年々減少傾向にあり(H25年速報で13%)、その代わりに徒歩5分、片道15分や1時間未満など「近居」を望む割合が増えています(同速報値で22%)。
今回の税制改正に関する内閣府の参考資料の中に「子育て世代の30~40歳代の約20%が三世代同居を理想の住まいと考えている。」とありました。
親世代よりも子世代の方が同居を良しと思っているという事でしょうか。
テレビで「子どもに迷惑を掛けたくない」と言っている年配の方の声を聴くと、本当にそうなのだろうか、過度の遠慮ではないのだろうかと思います。

これからは高齢者の単身世帯がますます増加します。
世帯の形態が核家族となり、住宅地では敷地面積があまり確保できない現状では難しいですが、同一敷地内の離れもしくは別棟に親世帯と子世帯が分かれて生活していた一昔前の生活というのは、それぞれの世帯にとって良かったのかもしれないなと感じます。

もう少しこの制度について考えてみたいと思います。

参考
平成26年度住宅経済関連データ(国土交通省)
平成28年度税制改正要望結果・参考資料集(内閣府)
平成20年住宅・土地統計調査(総務省統計局)